2017年5月29日

 

 

 

 

 

アップルは自動運転車を開発しているのか?

 

 

 

自動運転ではなく、移動に関するプラットフォーム=体験への関心

 

 

 

 

 

 グーグルがリードし、NVIDIAとトヨタの提携など、大手や有力IT企業の自動運転車開発のニュースがにぎわせているところですが、そこへきて、自動運転車開発に関する動向がはっきりしなかったアップルがついに重い腰を上げたかどうかというニュースです。

 

 

 弊社編集部も思っていたように、アップルは今のところアマゾンやグーグル、マイクロソフトなどに比べて目覚ましい製品もイノベーションも発表していません。社の業績は好調ですが、約10年前のiPhone以降、何も発表していないといっていい状態です。以下の記事にもあるように、アップルウォッチは特に大きな波を起こしてはいない。

 

 

 アップルの自動車計画は「プロジェクトタイタン」と呼ばれるもので、それがいったい何を目指しているものなのかはっきりしませんでしたが、どうやら自動運転車そのものを開発するものではなさそうです。自動運転車はやはりグーグルらが先行しているためだと思います。

 

 

 しかし記事で重要なのは、アップルが目を向けているのは自動運転車ではなく「体験」というところです。ここに非常に注目すべきところがあるはずなのですが、記事のほうをご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アップルは自動車ではなく、それ以上のものに取り組んでいる

 

 

 

 

 

TECH INSIDER

May. 15, 2017

https://www.businessinsider.jp/post-33566

 

 

 

テスラのダッシュボードの中央にある大きなスクリーン。いかにも便利そうだ。

 

 

 

 

 

 

 謎に包まれた「アップルカー」の動向が、妙だ。

 

 

 アップルは、自動車開発と見られる秘密計画「プロジェクト・タイタン(Project Titan)」のために1000人を採用したが、昨年後半、そのうち数百人をレイオフした。これは定期的な実験のつだとする見方もある。つまり、アップルは自動車の製造に必要なことを見極めた上で、計画を中止したのだという。

 

 

 しかし、Business Insider UKのサム・スヘッド(Sam Shead)は、最近、自動車に注力している秘密のアップルのオフィスをベルリンで発見した。エンジニアは自動車関連企業から採用され、一部は地図に関するプロジェクトに取り組んでいる。

 

 

結局、アップルは自動車に取り組んでいるのか?

 

 

 UBSのアナリスト、スティーブン・ミルノビッチ(Steven Milunovich)氏は、最近、Asymco.comのホレス・デディウ(Horace Dediu)氏およびAboveAvalon.comのネイル・サイバート(Neil Cybart)氏を対談に招き、「プロジェクト・タイタン」で何が起きているのかを尋ねた。デディウ氏とサイバート氏は以下のを指摘した。

 

 

 自動車関連市場は、「5~15兆ドル(約568~1704兆円)規模と見られ」、アップルがすでに参入しているITやヘルスケアよりも市場規模が大きい。

 

 

 「自動運転によって、自動車の所有が激減する」

 

 

 「アップルはセンサー、ドライビング、マッピングに関する専門技術を開発している」

要するに、「『プロジェクト・タイタン』は、移動に関するプラットフォームである可能性が高い。自動車というより体験全体だ」

 

 

 5兆ドルの市場規模は極めて重要だ。アップルが成長を続けるためには巨大な市場に参入するしかない。同社の規模を考えると、参入する市場は数十億ドル規模でなければならない。でなければ意味がない(例えば、Apple Watchは素晴らしいウェアラブル・デバイスだが、アップル内部に目立った変化をほとんど起こしていない)。

 

 

 もうつ重要なポイントは、アップルが「移動に関するプラットフォーム、つまり体験全体」に目を向けているだろうということだ。

 

iOSのようなオペレーティングシステムが必要になる。

 

 

 

 

 考えてみて欲しい。

 

 将来、ドライバーが不要になれば、私たちは車内で何をするだろうか? エンターテインメント、コミュニケーション、さらに仕事に関するアプリが必要になるはずだ。アップルは、もう他のデバイスで取り組んでいる。

 

 今後、自動車にはナビ、Wi-Fi、ブロードバンド接続が必要になるだろう、そしておそらく独自のオペレーティングシステムも必要となる。これも、すでにアップルが手がけていることだ。

 

 さらに合わせて考えたいのは、アップル周辺から漏れ聞こえてきたもうつの噂だ。アップルは、ホームユース向けに、ディスプレイを備えた音声アシスタントAIを搭載したスマートスピーカーを開発していると言われている。アップルはすでに、iPadやSiriに取り組んでいる。料理中にキッチンで話しかけることができるスタンドアロン製品に何か新しいチャンスがあるとしたら、アップルはすでにあと少しのところにいる。Apple Homekitはそのための種まきなのかもしれない。

 

 iPad、スマートスピーカー、Homekitでの体験を、自動運転や車の制御をiOSのようなインターフェースで行うようにするには、そう長くはかからないだろう。

 

 テスラのダッシュボード(記事上部の写真)を見て欲しい。大部分はコンピュータスクリーンになっている。

 

 アップルがここを見逃すはずはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 編集部からのコメントです。

 

 

 アップルは「体験」を重視しているという部分には「おっ!」と思ったのですが、どうもこの記事だけでははっきりしません。センサーやマッピングとありましたから、そういうインフラに近い部分を充実させるのかと思いました。しかし、センサーはどこの会社も取り組んでいて、むしろAIの画像認識が出るまでの代替であり、今ではその補助の位置づけです。マッピングに関しては、ご存じグーグルマップを持つグーグルにはかないません。

 

 

 記事では、ドライバーがいなくなったとき、社内で何を「体験」するかということを述べています。そこでアップルは、車に乗っている間の娯楽や仕事ができるプラットフォームに目を向けているとのことです。そこで、アマゾンのAlexaのような音声認識に取り組んでいるとのこと。

 

 

 しかし、それが自動運転車にどう結びつくのかが今一つぱっとしません。アップルはやはり、ハード面の強い会社です。少なくとも自動運転車にかかわるソフト面、AI系の技術に関しては、完全に後れを取っているという現状です。車から開発するというのも考えづらい。

 

 

 IT企業の王者アップルはこのままではないと思います。これまでもウィンドウズの登場時には、アップルはもう死に体だと言われたことがありました。それが今現在の2010年代に完全復活して、スマートフォン市場の雄となっています。

 

 

 目覚ましい先見が現在のアップルに関する記事からは確認ができませんが、今後の動向に期待したいところです。

 

 

 次は、弊社編集部ではことあるごとに唱えてきた、21世紀インフラ変更の一部をなす、自動車の個人所有消滅に関する、非常に重要な記事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アメリカのマイカー所有者は2030年までに80%減少する」 —— アナリスト報告

 

 

 

 

 

 

 

Leanna Garfield

May. 17, 2017

https://www.businessinsider.jp/post-33398

 

 

 

 

 

 

 

 

2030年までに、アメリカではマイカーを持つ人がほとんどいなくなり、代わりに自動運転車のライドシェアサービスが利用されるだろう。

 

 

 

 

 

 

 これは、テクノロジーと個人の車の所有に関する最新の報告書でアナリストが示した「未来予想図」だ。レポートをまとめたシンクタンクRethinkXの共同創業者でスタンフォード大学の講師でもあるトニー・セバ(Tony Seba)氏と、ハイテク投資家で慈善家のジェームズ・アービブ(James Arbib)氏は、「ライドシェア会社が保有する自動運転の電気自動車公共ネットワークが、未来の都市交通を担うだろう。その未来が実現すれば、アメリカの交通システムは大きく影響を受ける」と述べた。

 

 

 

研究による予測:

 

 

・2030年までに、アメリカのマイカー所有者は80%減少する。

 

全米を走る乗用車の台数は、4700万台(2020年)から、4400万台(2030年)に減る。

 

2021年までに、電気自動車のライドシェアサービスを利用した場合のマイル(約1.6km)あたりの費用は、新車を購入した場合の分の1~10分のになる。各世帯の年間コストも、マイカーを購入・維持するのに比べ約5600ドル(約63万円)安くなる

 

世界の石油需要は、2020年に日あたり億バレルとピークを迎え、2030年には日あたり7000万バレルに減少する。

 

移動コストの軽減で、2030年のアメリカの世帯可処分所得(年間)は、現在より合計兆ドル増加する。

 

 

 アメリカ人の大多数が自動運転車や電気自動車のライドシェア利用に移行したら、都市の道路計画は大きく影響を受けるだろう。報告書によると、ライドシェアは駐車の必要がないため、2030年には車の台数が減少する。乗客を降ろすとすぐに新しい乗客を拾いに行けるため、多くの駐車場が不要になり、歩道の拡幅、住宅や公園の拡大、車乗り入れ禁止区域の増設が可能となる。

 

 

 アメリカで販売された車は、平均して95%以上の時間が駐車にあてられている。しかし、路上の車が減れば、道路の車線や駐車場を他の用途に使える。中にはすでに、こうした未来に備えている都市もある。例えば、サンフランシスコでは、多くの駐車場が「パークレット(parklet)」というベンチや植物、時にはアートのある小さな公共スペースに替わっている。また、ピッツバーグは自動運転車の普及を見込み、今後20年は車線を増やさないとしている。

 

 

 多くの自動車メーカーは、運転手がいらない未来の創造を競う。

 

 

 テスラは2016年、配車サービス参入への意欲を示し同年後半には、自社の電気自動車に完全自動運転対応のハードウエアを搭載すると発表した

 

 

 ウーバーも同時期、企業として初めてピッツバーグの公道という現実世界で自動運転車の走行実験を行った実験で使われたのは個人所有のガソリン車だったが、ウーバーのCEOトラビス・カラニック(Travis Kalanick)氏は「UberPool」(知らない者同士で相乗りすることで、運賃を抑えるUberのサービスのアプリ)をウーバーの、そしてアメリカの交通の未来だと説明した。同社の交通政策に関わる部署の責任者アンドリュー・サルズバーグ(Andrew Salzberg)氏はかつて、「私は、どこへでもマイカーを運転して行く人の割合が減っていくと確信している」とBusiness Insiderに語っている

 

 

 GMフォードのような既存の自動車メーカーも、自動運転車のライドシェアに関する新たな取り組みを行っている。

 

 

 今回の研究の著者たちは、駐車スペースはいずれ無くなり、都市計画や道路インフラの将来図が再検討されるべきだと信じている。

 

 

 セバ氏はプレスリリースで「我々は歴史上で最も速く、深く、そして重大な既存の交通システムの混乱の渦中にいる。しかしそれは魔法でもたらされるのではなく、経済によって導かれるものだ」とコメントした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 編集部後記です。

 

 

 弊社ホームページではインフラ変更企業「サイドウォークラブズ」の登場に関する記事を掲載しました。ハイパーループ・ワンなどと合わせて、今後のアメリカの、ひいては世界の都市インフラが大きく変わるということを、何回も述べてきました。

 

 

 後半の記事では、電気自動車のライドシェアがマイカーの所有を減らし、駐車場の減少、その結果の都市利用の変更を述べています。そして、自動車の所有が減少することで、一世帯の可処分所得が増加するとあります。

 

 

 電気自動車とライドシェアだけでこの試算です。しかし実際には、ハイパーループや地下自動車交通網、ドローン配送、そして何よりも自動運転車のほぼ3年後には現実的になる観測が非常に高くなっていることを考え合わせると、21世紀の、そして3年後以降に本格的になろうとしているインフラ変更は、駐車場の減少だけにはとどまりません。

 

 

 AIの進歩と、ロボットの進出で、一世帯の可処分所得は上記の試算より増えることが考えられます。なぜなら現在人間は、エクセル操作やキーボード操作といった生産性に直接関与しない「雑務」に労力を取られているからです。

 

 

 そして、働く人や学生を苦しめている通勤自体が少なくなるでしょう。特に日本人は世界で最も苦しめられ、通勤にかかる体力消耗とストレス、その他の事件事故などで、本来は仕事に振り向けるべき体力と生産性を奪われています。

 

 

 インターネットの普及した現在ですら、かなりの仕事が通勤をなくすことができる状態です。交通インフラの変更で、通勤にかかるストレスも軽くなり、都市インフラ変更でそれほど通勤しなくてもよい、あるいは通勤自体なくなるといったことが出てきます。

 

 

 2017年現在はまだまだ夢物語ですが、こうした変化はある時急に始まり、その後はその方向へ加速度的に進むことがあります。戦後の自動車社会はそれをもっとも端的に表しています。車の進化とマイカーの増加、限りなく道路を作ることへの執着。これは20世紀後半の主軸でありました。

 

 

 これまで、さまざまなIT系記事をご紹介してきましたが、その根底に流れるものは、「21世紀の以後100年にわたるインフラ変更」、そして「生活様式の変更」です。今後も記事を継続してご紹介していきますが、機を見てそれらの記事を総合して、ノートウェア編集部の「社説」を掲載していく予定です。