2015年5月22日

 

 

 

 

 

日本の車も空を「飛び」ます

 

 

 

 

 

トヨタの「4000万円にものぼる」社内スタートアップ投資

 

 

 

 

 

 

 

 おはようございます。

 

 

 先週はアメリカとドイツの「空飛ぶクルマ」のセンセイショナルなニュースでした。簡単な実験にも成功しましたが、それでも技術面だけではなく、住民の不安や法規制といった、開発以外の大きな難題が数多く存在し、まだまだ「先の長い旅」になりそうです。

 

 

 そこへきて、世界のトヨタはどうなのでしょう。そう思っていた矢先、心強いニュースが飛び込んできました。ついにトヨタがその重い腰を上げ、飛行自動車事業に参入するという知らせです。

 

 

 ただし、そこには世界的な大企業とは思えぬ、あり得ないほどに衝撃的な事実がありました。世界的には、さまざまなスタートアップが生まれ、それに対する投資や買収、技術提携が行われ、自社のみでは開発が不可能な分野(特に自動車。飛行自動車に自動運転車)では、平行インフラを行うことがトレンドになっています。

 

 

 100年もの蓄積のある、先端技術と安定性の塊である自動車産業は、以下に先進的なIT企業でも、自社のみで開発することは「遅れ」を意味します。また、自動車メーカーの側も、自社内のIT部門だけでは太刀打ちできず、グーグルのような大手や先進的スタートアップを買収するなどして、最新のビジネス開発に対応しているということは、このホームページを見てくださっている希少な方々には、もはや常識的なことであろうと思います。

 

 

 その目で以下の記事を読むと、今の日本企業がいかに世界的に「あてにされていない」ものであるか、その現実がわかるかもしれません。

 

 

 ピーター・ティール氏は日本企業のこれからには期待できますかという質問に「日本企業ねえ・・・・・・・・・・明治維新2.0を始めるんだよ」という言葉を最近残しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「空飛ぶクルマ」離陸 トヨタが支援、20年の実用化目標 

 

 

 

 

 

 

日本経済新聞

2017/5/14

http://www.nikkei.com/article/DGXKASDZ08ICG_Z00C17A5MM8000/

 

 

 

 トヨタ自動車「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて、社内の若手有志が中心になって進めてきたプロジェクトに資金拠出する方針を固めた。米国の新興企業や航空機会社が相次ぎ参入を表明するなど、今最も注目を集める分野だ。次世代モビリティー(移動手段)論争が熱を帯びるなか、「空」が有力な選択肢として浮上している。

 

 

 

 

 

「空飛ぶクルマ」のイメージ

 

 

 

 

「空飛ぶクルマ」を試作する社員有志(愛知県豊田市)=小園雅之撮影

 

 

 

 

(編集部注記: キティホーク・フライヤーはもう飛んでます。下のNYTのビデオリンクからどうぞ。)

 

 

 

https://nyti.ms/2pVJvr2 (←湖上を制御飛行しているシーン)

 

 

 

 空飛ぶクルマは従来、有志団体「カーティベーター」のメンバーが勤務時間外に開発を進めてきた。資金はネットで広く支援を募るクラウドファンディングなどに頼っていた。今回、トヨタやグループ会社が4千万円規模の資金を提供することで大筋合意した。

 

 

 今後は複数のプロペラを制御し機体を安定させる技術を確立し、2018年末までに有人飛行が可能な試作機を完成させる計画だ。東京五輪が開催される20年の実用化を目指す。

 

 

 クルマは進化を続けて利便性を高めてきたが、排ガスによる環境問題や新興国などの渋滞は深刻だ。ひずみ解消へ自動車各社は電気自動車(EV)や燃料電池車など新たな動力源のクルマを開発、自動運転の研究も進めている。

 

 

 個人の移動手段として空飛ぶクルマがにわかに注目を集めるのは、従来の延長線上ではない形で、現在の自動車が抱える問題を解決できると期待されているからだ。道路そのものが不要になれば、渋滞はなくなる。垂直で離着陸できれば滑走路も不要だ。人の動き、流れが劇的に変わる可能性を秘める。

 

 

 

欧米勢も開発

 

 

 「フライヤー」など呼び名は様々だが、すでに米グーグル共同創業者、ラリー・ペイジ氏が出資する米新興企業、キティホークなどが実用化計画を示している。欧州航空機大手エアバスは年内に試験飛行を始めると公表。ライドシェア(相乗り)の米ウーバーテクノロジーズは4月、空飛ぶタクシーの開発計画を発表した。「空飛ぶ」は決して絵空事ではない。

 

 

(編集部注記: ドイツのリリウム社もすでに飛行実験を終えています。「絵空事」はもう終えて、都市上空をどれだけ安定的に、長時間一定のスピードで飛びきれるかという段階であり、ドローンに直面したばかりで、まだまだ頭の回り切れていない行政との調整と戦いが待っているという段階に差し掛かっているというのが真相です。)

 

 

 安全性の確保に加え、免許や交通ルールなどの法整備といった課題は山積する。EVや宇宙開発といった野心的な事業計画で知られる米起業家イーロン・マスク氏でさえ「騒音や風といった課題があり、頭上を飛行すると不安に思う」と発言している。ただ、トヨタなど大手企業が支援して開発が加速すれば、議論が厚みを増すのは確実だ。

 

 

(編集部注記: イーロン・マスク氏は、空にはそれほど興味を持っておらず、リニアモーターカプセルのハイパーループに宇宙事業、そして地下交通インフラ事業に乗り出しています。決して「そんな危険なよくわからないベンチャーに手は出しません」という姿勢ではありません。むしろ、アマゾン、グーグルらに比べても最も斬新で革新的な発想で物事を行っています。この記事のトーンでは、イーロン・マスクがいかに先進的なことをしているのかが、日本ではまだ理解されていない印象です。)

 

 

 カーティベーターは12年、現代表の中村翼氏が社外のビジネスコンテストに参加したのをきっかけに発足。オーダーメードのEVという計画で優勝し、その後、アイデアを練り直すなかで空飛ぶクルマにたどり着いた。

 

 

 「わくわくするモビリティーを実現したい」。こんな思いに賛同し、デザインや機械設計などを担当する約30人が加わる。グループ外からもドローン(小型無人機)の開発で実績を持つ三輪昌史徳島大准教授らが参画した。ガンホー・オンライン・エンターテイメントの創業者、孫泰蔵氏らも支援者に名を連ねる。

 

 

 一方、事業の推進体制はなかなか固まらなかった。開発加速のために独立やベンチャーキャピタルからの資金調達なども模索するが、思い通りに進まない。15年半ばにはトヨタ幹部に支援を直訴するが、具体的な動きにはつながらなかった。「悔しい」。メンバーのひとりは漏らしていた。

 

 

 

草の根から革新

 

 

 トヨタの研究開発に対する姿勢が徐々に変わり始める。1511月に技術系の新興企業に投資するファンドを設立することを決め、16年に入ると外部の専門家をトップに据えた人工知能(AI)の研究開発子会社を米国に設立した。

 

 

 トヨタは10日、18年3月期の研究開発費を過去最高水準に迫る1兆500億円とする計画を発表した。技術革新への備えは盤石なようにみえるが実態はやや異なる。

 

 

 「将来のクルマは現在とは全く異なる形になっているかもしれない」。トヨタ幹部は危機感をあらわにする。IT(情報技術)企業や新興企業など、異質な考え方や速さを持つ新たなライバルとの競争が始まっており、従来の枠組みを超えた突き抜けた発想も必要とみる。

 

 

 カーティベーターは社員でありながらチームの組成や資金調達といった経験を重ね、外部とのつながりを強めていた。一部には慎重な見方があったものの関係者によると内山田竹志会長が「技術の完成を待って資金を出すやり方では前進しない」と判断。草の根の革新に賭ける。

 

 

 トヨタはかつて、事業の柱を自動織機から自動車へと大胆に変えた経験を持つ。それからおよそ80年。再び技術の大転換期を迎えている。小さな一歩だが、新たな取り組みは非連続な変化を乗り越えるきっかけになるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トヨタ自動織機は今でも健在です。むしろ今でも本業ではないでしょうか。このままではトヨタは、「ベンチャーである現自動車開発業」から身を引いて、「本業」に戻るのではないかと思えてしまいます。

 

 

 記事中の「15年半ばにはトヨタ幹部に支援を直訴するが、具体的な動きにはつながらなかった」という社員の言葉が響きます。おそらく「そんな先の見えない、実現がまずありえないようなものに投資するなんてばかばかしい」と「企業論理」(具体的な見通しと目通しのある計画的なものにしか企業は投資できない。商売なんだこれは、甘いことを言うな)という壁が立ちふさがったのではないでしょうか。行政や社会倫理の壁以前の問題が、日本社会には大きく立ちふさがっていることは、もはや常識です。

 

 

 この記事は、先日のインテルの記事同様、大企業であっても危機感を持つべきであるという状況を、日本のグローバル大企業の側から、全く反対の実質的な危機感のなさという視点で乗せました。

 

 

 インテルのような盤石の企業が、スタートアップの出資し、ビジョンを描いて積極的に、また具体的に先を見据えているのに対し、同じく盤石な経営(しかし、自動車業界を取り巻く状況は、ここ数年加速度的に変化していることは素人に感じ取れますが)のトヨタの行政的な腰の重さと手遅れ感を感じ取ってもらえることに記事紹介の意図があります。

 

 

 輸送システムに関してもう一つのニュース。これを見て、東京の郊外に住む社会人や学生は、現実的切迫感から、この記事内容はうらやましいと思わざるを得なのではないでしょうか。東京や日本の都市の現実の通勤事情のひどさは、世界屈指です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シェア自転車は中国人の移動革命 簡単スマホ決済で人気爆発

 

 

 

 

 

 

 

BUSINESS INSIDER

May. 08, 2017

https://www.businessinsider.jp/post-33371

 

 

 

 

 

 

 「会社への行き帰りがすごく楽になったんですよ。満員のバスに乗らなくていいし、通勤時間も短縮できます。晴れた日は風が気持ちよくて爽快なんですよ~」

 

 

 4月下旬、久しぶりに上海を訪れた私に、友人の会社員、王媛媛(仮名、38)はこう言うと、スマホでロックを解除して、颯爽とシェア自転車にまたがった。最近は休日に都心で買い物をするときにも、頻繁にシェア自転車を活用しているという。

 

 

 今、中国で最もホットで、爆発的に拡大しているものといえば、このシェア自転車だろう。

 

 

 

20社以上のベンチャーが参入

 

 

 2016年の夏から秋頃にかけて、急速に北京や上海などの大都市間に広まり、強い存在感を示している。最も有名なものは車体がオレンジ色のMobike(摩拝単車)、同じく黄色のofo(共享単車)だが、17年春までの間に20社以上のベンチャー企業がシェア自転車ビジネス事業に乗り出しており、車体も青や緑などカラフルだ。中国の報道などによると、全国で700万台~1000万台もあると言われている。

 

 

 「中国版シェア自転車」の特徴は専用の自転車置き場ではなく、従来から自転車やバイクを置いている区域ならば、どこでも乗り降り自由、スマホで決済するだけで利用できる簡便さだ。

 

 

 使い方は、まずスマホにシェア自転車用のアプリを導入する。利用したいときにGPSでどこにシェア自転車があるかを検索すれば瞬時に見つけられる。一番近い場所にある自転車の元に行き、アプリで自転車のQRコードを読み取り、ロックを解除する(企業よってやり方は異なる)。それだけだ。乗り捨てるときにはアプリの「終了」ボタンを押せば自動的に再びロックがかかり、その場で決済すればいい。私も友人が乗るところに立ち会ったが、とても簡単であっという間だった。

 

 

 

支払いはアリペイやウィーチャットペイ

 

 

 料金体系も企業によって異なるが、Mobikeの場合、最初の利用時に299元(約5000円)のデポジットを支払い、30分乗ってわずか0.5元(約8円)という安さ。 一度アプリを導入すると、毎日のようにさまざまなクーポンやお知らせが流れてきて、料金が無料になるものなどもある。

 

 

 

 

 

スマホに専用アプリをダウンロードすれば、簡単に利用できる

 

 

 

 中国ネット通販最大手のアリババによる決済システム、アリペイ(支付宝)や、8億人以上が使用しているともいわれるウィーチャットペイ(微信支付)などで支払い、登録した銀行口座から自動引き落としされる。外国人でも中国の銀行口座を持ち、アプリを導入できれば同じように使用できる。手続きのシンプルさといい、手軽さといい、実にスマートなのだ。

 

 

 代表的シェア自転車企業といえば、前述したようにofo(共享単車)ブランドの共享単車とMobike(摩拝単車)ブランドの北京摩拝科技の2社だろう。

 

 

 ofoは北京大学出身の戴威(ダイ・ウェイ)氏が創業した。中国のサイトなどでも年齢は非公開となっているが、13年に北京大学大学院を修了しているので、いわゆる「90后(90年代生まれ)」。大学時代にキャンパスで何度も自転車の盗難に遭ったことから、このビジネスを思いついたという。14年に友人ら4人と創業し、北京大学内で試験的に導入を開始。16年から全国区となり、Mobikeとともにトップシェアを争っている。

 

 

 Mobikeを創業したのは1982年生まれの女性、胡玮炜(フー・ウェイウェイ)氏。浙江大学を卒業後、経済紙の記者となった。自動車業界などを担当していたとき、シェアライド事業を取材して興味を持ち、起業したと言われている。15年に創業し16年4月に上海で、9月に北京で事業を開始した。

 

 両社とも北京、上海、広州などを中心に事業を拡大しているが、他に小鳴単車、小藍単車、智享単車、黒鳥単車、1歩単車などが第2、第3のofo やMobikeを目指しているといわれている。

 

 

 ビジネスモデルがシンプルなだけに、今後は投資会社などからの支援を得て自転車を大量投入し、まだシェア自転車がない大都市圏でいかに早急にブランドを確立し、シェアを拡大するかがカギとなってくるだろう。競合が増えていくにつれ、Mobike がすでに実施したように、車体の軽量化や自転車の前にカゴをつけるなどの改良や工夫も進んでいくだろう。

 

 

 

移動のストレスが激減

 

 

 シェア自転車ビジネスがわずか1年ほどでここまで市民権を獲得したことは、私にとって驚きだ。だが、現に使用している中国人に戸惑いはまったくない。導入直後から興味津々で、すぐに仕事や遊びに活用して楽しんでいるように見える。利用者は創業者と同世代の20~30代が中心だ。

 

 

 今の中国人、特に若い世代は、目の前に飛び込んできた新しいもの、自分の役に立ちそうなものが大好きで、テクノロジーを駆使した新システムに対する好奇心が非常に強い。何でも見てやろう、やってみよう、という意欲が満々なのだ。

 

 

 さらにシェア自転車に関していえば、もともと中国が世界一の自転車大国だったという素地も関係しているように思う。80年代後半、北京市内の公共交通機関といえばトロリーバスしかなく、流しのタクシーは皆無だった。当然、自家用車もほとんどなく公用車がたまに数台通る……という有り様だった。40代以上の日本人ならば、北京の天安門広場前の太い道路を大勢の中国人がまるで波が押し寄せるように大挙して自転車に乗る姿を鮮明に記憶していることだろう。それくらい、中国は自転車が市民の足となっていた。

 

 

 2000年代になって中国のモータリゼーションは劇的に進化し、マイカーを持つことがステータスとなった。16年だけでも約2800万台の新車が売れ、中国は8年連続で世界一の自動車市場を維持している。富裕層は自動車を持つのが当たり前となり、中国の代名詞だった自転車は廃れていく一方だった。

 

 

 だが、マイカーの増加などが原因で激しい交通渋滞や環境汚染が深刻となり、都市によってはナンバープレートなどによる交通規制を導入するようになった。駐車場不足や自動車ローンなどに頭を悩ませる人も増えている。

 

 

 そこに現れたのがシェア自転車だった。これまでの地下鉄、バス、タクシー、自動車といった市民の交通手段に、ひとつ“新たな選択肢”が増えた。中国はとにかく人口が多く、移動にも時間がかかる。さまざまな人が好き勝手にうごめいて行動しているので、歩きづらいし疲れる。

 

 

 そんなストレスフルな生活の中で、誰かを頼りにしなくても、スマホ1台あれば、いつでもどこでも自転車を見つけて乗ることができ、少なくとも数キロ先までは自力で移動できるということは、日本人が想像する以上にストレスを軽減するものだ。

 

 

 

マナーの悪さから大量廃棄される自転車

 

 

 ちょうどアリペイ、ウィーチャットペイといったアプリでの決済システムが定着し、最新のITと自転車、という中国人にとって古くからある身近な移動手段がうまくマッチした。その便利さ、気軽さに飛びつき、今、夢中になっているのだろう。

 

 

 もちろん問題点はある。中国人のマナーや意識に個人差があるため、乗り捨ての際にきちんと駐車しないで雑に扱って壊したり、勝手に廃棄したり、なぜか叩き壊すといったひどい例もあり、使い物にならなくなった自転車を行政が大量処分している場面も中国の報道でよく目にする。便利である半面、社会問題化しつつある。中国人は熱しやすく冷めやすいので、いざ飽和状態になったとき、淘汰も急速に進んでいくに違いない。

 

 

 しかし、スマホ決済などと同様、ITの進化が中国人の生活の質を上げ、生きていく上での選択肢をひとつ増やし、これまでになく快適な生活を楽しめるようになってきている。それだけは確かだ。